プリンテッドエレクトロニクスでの赤外線加熱の応用

プリンテッドエレクトロニクスや機能性コーティングの印刷は、携帯電話やクレジットカード(スマートカード)の一部、コピー防止、またはIDカードのセキュリティー機能として無線ICタグに使われています。

電子回路を形成するためには、プラスチックフィルム基板、紙、またはガラス基板上に有機材料または金属含有インクを塗布します。
乾燥、硬化、焼結は必要な導電性、半導体、誘電特性を得るために必要な方法です。
UVランプ、UV LED、フラッシュランプ、温風炉、または赤外線システムといった光源システムがこの用途で使われています。

プリンテッドエレクトロニクスの乾燥・焼結に赤外線ヒーターを用いるメリット

  • 赤外線は基板に接触することなく高出力で加熱できる
  • 赤外線ヒーターは、波長、出力、ヒーターのピッチを調整することで機能性コーティングに対して最適化するよう調整可能である
  • ON/OFF応答が早いため、ラインが急に停止した場合でも熱ダメージを最小限に抑えることができる
  • PID制御も提案可能。これにより、温度制御を確実にすることができる
  • 1システム内で異なるヒーターの組み合わせにより、1工程中で乾燥と焼結の両方のプロセスが可能である
  • 赤外線モジュールは、従来の温風炉に比べ省スペース化が可能である

導入事例

赤外線ヒーター, プリンテッドエレクトロニクス

赤外線ヒーターをプリンテッドエレクトロニクス用インクの開発、評価に応用

短波長ヒーターを組み込んだノーブルライト製赤外線炉は、プリンテッドエレクトロニクスで使われる導電性インクの研究、開発、評価をするためにセンター・フォー・プロセス・イノヴェーション社(The Centre for Process Innovation、CPI社)で使用されています。CPI社は英国の国立研究開発センターで、プリンテッドエレクトロニクスの専門家がそのコンセプトから商業化への移行を加速すべく、最先端の研究開発を行っています。

CPI社では、研究における重要な項目として、特殊なインクの検証を行っています。Sedgefieldにある設備装置には、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、ロータリースクリーン印刷の機能を併せ持つ印刷機があります。この印刷機は、プリンテッドエレクトロニクスで用いられるマイクロ粒子、ナノ微粒子インクの試験および評価用として用いられています。マイクロ粒子インクはマイクロサイズの導電性銀フレークを含有し、一方ナノ微粒子インクはナノサイズの導電性銀ボールを含有しています。いずれもプリント回路を基板に形成するために焼結されます。インクは一般に温風で乾燥できる溶剤が用いられています。印刷されたウェブは、赤外線乾燥炉に搬送され、コーティングが焼結されます。導電性ナノインクの中には、温風を必要とせず1回のIRステップで焼結できるものもあります。

赤外線乾燥炉は、5本の高出力短波長赤外線ヒーターを搭載したユニット仕様で、プロセス中のヒーター出力を均等にするため、赤外線ヒーターは手動のサイリスタ制御によって3つのゾーンに分けられており、切り替えができるようになっています。1つのゾーンは3.6kWです。これによって、赤外線乾燥炉の熱出力を使用条件によって変えることが可能になります。空冷式で、石英ガラスをベースとする反射コーティング材「QRC nano」をコーティングした石英リフレクターがウェブの真下についていることで、焼結効率を向上することができます。

CPI社のニール・ポーター氏は、「この新しい赤外線乾燥炉によって、試作スケールでインクの焼結レベル評価において、実験の柔軟性が著しく広がりました。ウェブ基材に影響を与えることなく、最も優れた生産率で焼結することができ、また最高70%ものインクの導電率を向上することができました。今後は、プリンタブルエレクトロニクス用水性インクの水分を蒸発させるため、赤外線乾燥炉の機能を拡充することを検討しています。」とコメントしています。

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